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七十二候

第51章 熊蟄穴(くまあなにこもる)


 翌日。いつもよりゆっくりと起きて、演奏を聴いてくれた方々から届いたメッセージに返信を送っていた。身体は鉛のように重たかった。
 今日はオフなのでゆっくりと家事をし、先に日課の基礎練習とアンサンブル曲の練習をしてから作曲の作業に集中した。オフとはいえ、クラリネットは病気でもない限りは年中無休で練習をする。演奏家は一生研鑽を積む職業なのだ。
 作曲については、初めは7分くらい……と思っていたが、やりたいことがありすぎて、春夏秋冬の4つの小品で構成することになった。曲のタイトルは未定だ。
 来年の3月、徹のシーズンが終わることには完成させたいなと考えていた。徹と会って話がしたいなと考えていた。しかしアルゼンチンに行くには1週間は休みが必要だ。既にに予定が埋まりだしているので難しそうではあるが、希望は捨てない。
 
 音楽コンクールもリサイタルも無事終えられたので、次は私が徹を応援する番だと思っている。だけど私に応援させてもらえるのだろうか。私は徹の気持ちが知りたかった。話せは普通に接してくれるし冗談も言ってくれる。だけど、本心はどこにあるんだろう。
 不安な心とは裏腹に、テレビからは呑気なクリスマスソングが流れていた。私はテレビを消して作業を進めた。
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