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七十二候

第50章 閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)


 街がクリスマスの雰囲気を醸し始めた。ちょっと明るく楽しい雰囲気が街を賑わせる。
 今日は私のリサイタルだ。新大久保にある楽器店に併設された小さなホールが会場だ。とても良い響きがするホールなので、ここで演奏できることはとても嬉しい。ちなみに場所は新大久保なので、クリスマス感はあまりない。むしろ多国籍な店が集い、異国情緒のほうがあった。
 ありがたいことに満席。レモンをはじめとした音楽仲間や先生方、教え子たちもたくさん来てくれる。とても嬉しいことだ。私の演奏をたくさんの人に聴いてもらえるなんて、それも、有料だがライブ配信もしてもらえるので、遠くに住む両親や友達、岩ちゃん、そして徹にも聴いてもらえるのだ。
 今日は新しいドレスを新調した。ピンクの花をあしらったドレスだ。いつもは青やネイビーなど無難な色を選びがちな私。柄にもないかもしれないけど、ピンクの花は今しか着られないかもしれないし、こういった可愛らしいものにも挑戦して着てみたくなったのだ。

 リハーサルを終えて、時間が少しあったので、SNSに「これからリサイタル。頑張ります!」とドレス姿とともに投稿してみる。レモンの仲間がすぐにイイねをくれ、その反応の速さに笑ってしまった。ちなみに、リードはどうにかいいものを見つけられた。

 18時半。開場の時間になる。私はメイクを直し、楽屋で最終調整をしていた。ふとスマホを見ると、徹からメッセージは入っていた。
「リサイタルの開催おめでとう! 朝からPC前にスタンバってるよ。リサイタル楽しんでね」
「ありがとう! 私も今からわくわくしているよ。頑張るね」

 いよいよリサイタルが始まる。心を込めて演奏しよう。みんな、喜んでくれるといいな。
 控室から客席の様子を見たり、譜面を見ているうちにあっという間に開演のベルの音が鳴った。

 静寂の中、入場する。小さなホールなのでお客さんとの距離が近い。お客さんもこうも静かだと緊張するんだろうな。
私は前田くんとともに丁寧にお辞儀をする。たくさんの拍手をいただいて、心は高鳴っていた。
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