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七十二候

第46章 金盞香(きんせんかさく)


「まぁ、契約金が今より高額なら、日本でもどこでもあり得るけどね~。俺を高く買ってくれるなら」
「さすが及川選手!」私は冗談っぽく笑った。
「私は慎重派だからさ、もう少し実力をつけてから考えたいな。海外で活動するなら、吹奏楽やアンサンブルだけじゃなくて、ソリストとしても力をつけなきゃ」
「フランスでもちゃんと成果を出したのにずいぶん慎重だね。気がついたらおばあちゃんになってるかもよ?」
「それはやだな……」
「萌のペースでいいと思うけど、俺は俺で進んでしまうかもよ?」
「……追いつくから。絶対」
 徹の言う通りだった。亀のように歩いてたら掴めるはずだったチャンスも逃すかもしれない。でも、私は納得がいかないと次に進めない。やはり、先のことは今でも見えていなかった。徹はこんな私に呆れているのかな。徹のことはもちろん大切に想っているけど、音楽は捨てられない。共存したい。自分の力で得た大切な今の環境を簡単に手放すことはできなかった。
 果たして、私は正しい道に進めているのだろうか。
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