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七十二候

第43章 楓蔦黄(もみじつたきばむ)


 今回のコンクールで賞金をいただいた。これは徹へのいつかのお祝いと、クラリネットに役立てよう。
「ほんとは指輪とかもいいかな~って思ったんだけど、サイズが分からなかったんだよね」
「そうなんだ。高校から変わってないよ。でもネックレス嬉しいよ」
 そう、これは幸福や愛情を意味するモチーフのネックレス。意味を知ってかどうか分からないけど、これを選んでくれた徹が愛おしかった。日本のサイトで購入してくれたから、すぐに届いたのだと思う。
「はは、ありがとう。それよりも、休みなく活動していて疲れてない? たまには1日でもいいから休みなよ」
「ちょうどそれについて思ってた。日本に帰って来てから遊んだりしている記憶がない」
「年頃の女の子なんだから楽しいこともしないと!」
「徹も年頃の男の子じゃないか」
「はは……。それよりも、会いたいね……」

 徹から“会いたい”と言われるのは初めてだった。そして、私もずっと同じ気持ちだった。
「会いたい……」
「うん……。今は、俺も萌を見習って頑張るね」
 私を見習うって?私が尊敬している人にそんなことを言われて驚いた。気恥ずかしさを感じつつ、少しだけ素直に受け入れることにした。
 そして、こんな宙ぶらりんな状況、徹だって辛いんだ。だけど、全てを飲み込んで、「会いたい」とだけ言ってくれた徹。どうしていくのが一番お互いのためになるのか、いよいよ考えなくてはならない。そんな気がした。
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