第6章 旅立ちの時
クザンはふと、ミーウが生まれた時のことを思い出した。ーーその日は眩しいくらいの太陽が光り輝き、優しい風が吹く、とても爽やかな朝だった。
「♪〜その根は深く 太く 強く〜♪」
ミーウが歌い終わってから、城の人々は拍手をした。
ミーウは深呼吸をした。
「どうでしたか?」
「とてもよかったわ。ありがとう」
メアリーはミーウをまた抱き締めた。ーー今度はこれが本当に最後になるのだということを頭では思いながら……。
「気を付けて行って来てね。ミーウ」
「うん」
メアリーは少しだけ涙ぐみながら言った。
「毎日ちゃんとご飯を食べること。ちゃんと歯磨きをしてから、しっかり寝ること。夜更かしはダメよ。アユナとミシュラの言う事はきちんと聞くこと。それから……」
「おい、メアリー」
メアリーが話していると、クザンが後ろから声を掛けた。
メアリーは後ろを振り返った。
「ミーウを何歳だと思ってるんだ。そんなことは言われなくても、ちゃんとできると思うよ?」
メアリーは瞬きを1回して笑った。
「それもそうね」
メアリーはミーウを離した。
「ミーウ、長くなっちゃったけど最後に1つだけ」
メアリーは真剣な瞳をミーウに向けた。
「無茶だけは絶対にしないこと。絶対に……生きて……生きて、またこの場所へ帰って来ること。約束よ」
ミーウはそれを聞いて笑った。
「わかりました」
メアリーは大きくなった我が子に笑顔を向けた。
「行って来ます。お母様」
そう言って、ミーウは船に乗った。
アユナはみんなに礼をしてから船に乗った。
「メアリー」