第6章 旅立ちの時
メアリーは顔を上げて、ミーウを見つめた。
「だからミーウ、その刀を抜かないでね」
ーー抜いたら最後、ミーウは咎を負ってしまう。
メアリーは悲しそうに笑った。
「どんな理由があっても……どんなに辛くて恨めしいことがあっても……抜かないって約束して」
「……」
(お母様……)
メアリーは悩んだ末に、その刀をミーウに渡すことを選んだ。ーー本当は〈紅桜〉をミーウに持って行かせたくはなかったが、ミーウの大好きなシェルミーの形見をお守り代わりに持って行かせることにしたのだ。ーーそれに、何よりもシェルミーがミーウがその刀を持っていることを切に願っていたからだ。
そのことをミーウは悟った。
「わかりました」
ミーウは〈紅桜〉を鞘に収めた。
「約束します」
ーー絶対に違えてはならない約束。
メアリーは笑った。
「ありがとう……ミーウ」
メアリーはミーウを抱き締めた。
ミーウもメアリーを抱き締め返す。
「いつの間にか、こんなに大きくなったのね……」
(ほんのちょっと前までは、わたしの腕の中にいたのに……)
メアリーは少し寂しそうに笑って、ミーウを見た。
「自分の大切な娘の見送りはちゃんとしないとね。じゃあ、ミーウ」
「何ですか?」
メアリーはミーウから体を離して、彼女を見つめた。
「進水式で何を歌って欲しい?」
ミーウは困った顔をした。
「そうですね……」
「何でもいいわよ」
「じゃあ……」