第6章 旅立ちの時
「……」
ミーウはその刀を見た。
「妖刀は……知っているわね。妖刀を腰にした者は悲運の死を遂げる」
ーー今まで、数多くの海賊が妖刀と呼ばれる刀を使っていたと言われているが、その刀を使った者全てが悲運の死を遂げていると聞く。
ミーウは黙って頷いた。
「でも、あなたは大丈夫よ」
ミーウはメアリーを見た。
「あなたはお母様とわたしの血を受け継いだ子だもの」
ーそして、あの人の血を引く子……。
メアリーは笑った。
ミーウは笑い返して、そっと鞘から刀を少しだけ抜いた。〈紅桜〉の造りは白塗鞘太刀拵、刃は乱刃沙紅羅(らんばさくら)だ。乱刃沙紅羅は乱刃の模様が桜の花びらのようだからその名前がついた、〈紅桜〉専門の刃文だ。
「ただし……」
ミーウはメアリーに視線を移した。
「この刀は人を斬れば、必ず返り血をその身に浴びてしまう」
メアリーは視線を落とした。
「わたしたちは返り血を浴びてはいけない。そして、人を殺してはいけない」
ミーウは頷いた。
ーーこれはミーウたち一族の運命だ。この理だけは犯してはならない。そうしなければ……彼女たちは生きていられなくなる。
「理を犯したら、その身には一生消えない血濡れの咎を負うことになる」