第6章 旅立ちの時
(クザン……)
ーーミーウたちは城の人たちには何も言わずに出て行こうとしていた。本人たちにとってはとても寂しいことだったが、海賊という“悪”になるため仕方がないと割り切っていた。
(クザン、ありがとう)
ミーウは心の中でクザンにお礼を述べた。
「ミーウ様」
ミーウはエミを見た。
「ご立派になられて、何よりでございます。気を付けて……行って来てくださいませ。わたしは……ミーウ様の帰りを、ずっと待っています」
エミは涙目になって、言葉を詰まらせながら言った。
「エミ……」
ミーウはエミを抱き締めた。
「今までありがとう。わたしを育ててくれて、本当にありがとう。絶対〈ひとつなぎの大秘宝〉を見つけて、無事に帰って来るね」
エミは必死に涙を堪えて、何回も頷いた。
ミーウは未練がましい思いを断ち切って、エミと離れて船に向かった。
「ミーウ様、アユナ様、ミシュラ、お気を付けて!」
「また戻って来てくださいね!」
人々からそのような言葉をかけられながら、2人と1匹は船の前に着いた。
「ミーウ」
呼ばれた声に振り返ると、そこにはクザンが立っていた。
「何?」
「これ、お前に」
「え……」
渡されたのは大きな紙袋だった。その中には服が入っていた。上は髪飾りから下は靴まで全部だ。
「な、何で服?」
「自由の象徴とでも思っておけ。お前が自由になったと思ったら、それを着ておれに会いに来い」
クザンは笑った。
「その服を着てきた時、おれはお前を一人前の海賊だと思おう」
「わかった」
ミーウは笑った。
「ありがとう、クザン」