第6章 旅立ちの時
「今日は……」
クザンはメアリーを見た。
「今日は以前、ミーウとアユナと海賊になる約束をした2人が海に出て……海賊になったんです」
ーー8年前、ミーウとアユナがキッドとキラーと約束をした時、クザンは大楠の木の上でその様子を見守っていた。ーーもちろん、そのことはメアリーに報告した。クザンもミーウたちと同じように、メアリーが寝込んでしまうのではないかと心配していたが、その考えとは裏腹に、メアリーは黙って優しく頷くだけだった。
「……そう」
メアリーは寂しそうに目を細めた。
「約束した人に裏切られたのに、ミーウは見送りに行ったの?」
「はい」
クザンは表情を変えずに頷いた。
「ミーウは……どうするって言っているの?」
メアリーは首を傾げた。
「ミーウも海賊になって後を追う、と」
「そう」
メアリーは笑った。
「お母様そっくりね」
「そうですね」
メアリーは突然、ため息をついた。
「クザン、その口調……いい加減やめてくれない?」
メアリーはクザンの目を見て言った。
「何回も言っているでしょ?」
「女王陛下に対して、失礼なことを申し上げてはいけませんので……」
クザンは下に向けていた目を上げて、メアリーを見た。
メアリーは口を固く結んで、じっとクザンを見つめていた。
「メアリーよ」