第6章 旅立ちの時
その日の夜、クザンは1人で城の廊下を歩いていた。ーークザンは毎日、メアリーにミーウとアユナがその日1日の間、何をしていたかを話をしに行っていた。それが1日の最後の仕事だ。メアリーは女王の身であるがために、とても忙しい。だから、クザンにミーウとアユナを守ってもらいつつ、報告もしてもらっているのだ。ーー母親としてミーウと接する時間があまりないため、メアリーはクザンからミーウの状況を聞くしかないのだ。
「クザン様?」
廊下を歩いていると、1人の若いメイドがクザンに歩み寄って来た。
「どうか致しましたか? 何か……」
メイドは海軍大将を前に少し緊張しながら、クザンに質問をした。
「女王陛下とちょっとだけ話がしたいんだけど」
「そうでございましたか。失礼致しました」
そう言ってメイドは深々と頭を下げて、自室の方に歩いて行った。
「……」
クザンはその後ろ姿を見ながら、顎に手を当てて首を傾げた。
(初めて見られたな)
ー毎日、メアリーと話をするために廊下を歩いていたが……今までは誰にも気付かれることはなかった。
「まあ、いいか」
クザンはメアリーの部屋の前に来て、扉をノックした。
「クザンです。入ります」
「どうぞ」
クザンはドアを開けて、部屋に入った。
「今日はどうだった?」
「ミシュラが2人を乗せて、北の港に行きました」
メアリーはクザンを振り返って見た。
「いつもの大楠じゃないの? それに、何でミシュラも一緒なの?」