第55章 人間オークション
「……」
「ミーウさん、あれ……」
人間オークションのスタッフは地面に膝を付けて頭を下げている。
「天竜人よ」
ミーウは小声でユイに言った。
ユイはその言葉に思わず、天竜人から目を逸らす。
「なるほどな」
キッドはミーウの言わんとすることを察し、会場の壁にもたれた。
「……天竜人、奴隷、人間屋……フンッ」
キッドは階段の下へと歩いている天竜人を腕を組んで眺めている。
「欲をかいた権力者の純心に比べりゃ、世の悪党の方がいくらか人道的だ。クズが世界を支配するからクズが生まれる。こんなことも分からねェか」
「……」
ー彼の言う通りだ。天竜人は奴隷を所有することを悪いことだと認識していない。当たり前だと思っている。それに比べて、海賊は自分たちは悪いことをしていると認識している。だから、海軍から逃げるのだ。
「おれたちは悪気がある分、可愛いもんだな。キラー」
「違いない」
「……」
ミーウは顔を俯けた。
ーー彼らが自分の正体を知ったら、何と言うだろうか。今みたいに、軽蔑するだろうか。
「ミーウ」
アユナがミーウの後ろから声をかけた。
「大丈夫よ。ありがとう」
ミーウはアユナを振り返って、にこりと笑った。
「面白い奴がいたら買ってくか? ハハハ!」
「キッドの頭、あれを……」
「あァ?」
キッドが笑っていると、隣にいたヒートがキッドに耳打ちをした。ヒートが目をやった先には、白い帽子の男がいた。ーー先程、ユイがスレイジに話していた人物だ。