第55章 人間オークション
「いえ……あの少し前に座っている人たち……」
ユイが言っている方向を見ると、同じ列の長椅子に白いふわふわした頭が見えた。
「あれは……」
スレイジが言葉を続けようとした、その時だった。
「ここか、人間オークションの会場は」
スレイジはその声を聞き、後ろを振り向いた。そして、目にした人物を睨み付けた。
ミーウも振り向いた。
「……キッド」
「ミーウ……」
キッドは少し驚いたように目を見張ったが、やがて口角を上へと上げた。
「お前がこんな所に来るなんて……珍しいこともあるもんだなァ。こういう所は好きじゃねェだろ」
「……そうね」
ミーウとキッドが話す横で、スレイジは殺意を剥き出しにしている。
「スレイジ」
宥めるようにミーウはスレイジの名前を呼び、その言葉でスレイジは剥き出しになっていた殺意を押さえ込んだ。側から見ると、猛獣と猛獣使いのようだが……。
「何しに来たんだ? まさか、奴隷を買いに来たわけでもねェのに」
「……見学……かな?」
「見学?」
「ええ」
ミーウは体を半分キッドの方へ向けた。
「どんな人がここに来るのか……とか?」
2人が話していると、後ろの大きな扉が開いた。外から会場内に人が2人入って来る。ーーシャボンのマスクで頭を覆っており、変な服を着ている人たち。