第5章 重なる心と別れ
「……そうか……」
キッドはフッと笑った。
「楽しみにしてるぜ。ミーウ」
そう言ってまた笑ってから、ビブルカードのネックレスをギュッと握り締めてキッドは船に乗ろうとした。しかし……。
「待って」
ミーウは船に乗ろうとしていたキッドを呼び止めた。
キッドは後ろを向いて、眉を寄せた。
「何だ? まだ何かあんのか?」
キッドは乗り始めていた船から降りた。
ミーウは小さく頷いた。
「キッド、出航前に何を歌ってほしい?」
「……は?」
キッドはミーウの質問に口をポカンと開けて間抜けな顔をした。
「だーかーらー! 出航前の進水式に何を歌ってほしいかって聞いているの!」
ーーミーウの一族では、船の進水式の際に歌を歌って航海の無事を祈る儀式がある。しかし、ミーウはそのことをミーウの一族しかやらないということは知らないため、キッドにこのことを聞いたのだ。だから、ミーウがキッドに歌のことを聞いた瞬間、アユナとミシュラが固まったのは言うまでもない。
「キッド、早く答えてよ! 何がいいの?」
そんなことを知らないミーウはキッドにしつこく聞いている。
「……そうだな」