第5章 重なる心と別れ
(……歌か……)
キッドはミーウの紅い瞳を見ながらふと考えた。
(……最後にあの人の歌を聴いたのはいつだったんだろうな……)
ー少しの間だけ、自分を育ててくれた人……。
キッドはミーウの瞳を見ながら、少しずつ記憶を辿っていた。
(あの時……)
ー最後にあの人が歌った曲は……。
キッドは少しだけ悲しそうに笑った。
「ミーウ」
「ん?」
ミーウは首を傾げた。
「……“赤い糸”って曲……知っているか?」
「うん」
キッドは頬をかきながら言った。
「それを歌ってくれねェか?」
その瞬間、ミーウは向日葵が咲いたような笑顔で笑った。
「うん! いいよ!」
キッドも嬉しそうに笑った。
「じゃァ、頼むぜ」
「任せてよ」
ミーウはにっこりと笑うと息を少し吸った。そして、ゆっくりと口を開いて歌い始めた。
「♪〜2人ここではじめて会ったのが〜♪」
高くて、風の中に消えてしまいそうな声。キッドはそんな歌声を紡ぎ出すミーウから目を離せずにいた。
(綺麗だ……)
キッドは目を細めた。
「♪〜心の通わぬ やりとりばかり これ以上くり返すよりも〜♪」