第53章 シャボンディ諸島の闇
「何? ジウ」
ジウは質問のために挙げた右手を下げた。
「“賞金稼ぎ”という言葉が出てくるのは分かります。ですが、“人攫い”とは? 奴隷制度は……“世界政府”が否定をしていて、世界的にもタブーになったはずでは……」
「その通りよ」
ミーウは軽蔑した目を後ろにある“シャボンディ諸島”に向けた。
「奴隷制度……人間屋の横行や他にも、魚人族・人魚族への差別などは200年前に悪しき歴史として、“世界政府”が否定した。だけど、この島は!」
ミーウは体の横で握り締めた拳を怒りで震わせる。
「“悪”とされたはずの差別が今も公然と肯定されていて! 近くにいるはずの海軍も! それを、見て見ぬふりしてるの!」
ミーウは唇を噛み締める。
「ミーウ……」
アユナや他の船員たちは悲しい顔をした。
「……ごめんなさい。カッとなりすぎたわ」
ミーウは先程までとは打って変わって、目を瞑って開いた時には少し笑顔を見せた。
「……とりあえず、この島の“闇”はわかった」
ショウラは腕を組んで言った。
「とにかく、おれたちは穏便に過ごしていればいいんだな?」
「ええ」
アユナは頷いた。