第53章 シャボンディ諸島の闇
「……ハンコックが言っていたことか」
「……ええ……」
ーー1週間前に、ハンコックと共闘した際に言われたこと。まだ、みんなの記憶にも新しい。
「特に……ミーウ」
「……」
名指しをされて、アユナが喋っている間俯けていた顔をミーウは上げた。
「時と場合によっては……無理かもしれない」
「ミーウ!」
普段、穏やかなアユナの口調が強くなる。
「わかっているはずよ! 天竜人を傷つけると、海軍本部の“大将”が軍を率いてやってくることを」
「……」
ミーウは黙って、アユナの話を聞いている。
「……あなただけじゃないの。たくさんの仲間がいるのよ?」
「……」
黙ったまま、ミーウはアユナの黒い瞳から目を離さない。
「……約束して……」
「……わかった……」
ミーウの言葉に、アユナはホッとしたように笑った。
「……ついでに、この島に入る時の注意点も伝えるわ」
ミーウは腕を組んで、自分の船の船員たちを見た。
「まず、天竜人の特徴……奴らは一般人と同じ空気を吸わないようにマスクをしているの」
「マスク?」
「見たらわかるわ。明らかに異常だから」
ミーウは鼻で笑った。