第53章 シャボンディ諸島の闇
水神海賊団一行は“シャボンディ諸島”へと船を止めて上陸した。
「みんな」
久し振りの上陸で、早速船から降りようとしていた水神海賊団の面々をアユナが呼び止めた。
「何だ、アユナ」
「……上陸する前に、伝えたいことがあるの」
「伝えたいこと?」
他の船員達がアユナに注目している中、ミーウはアユナがこれから話そうとしている内容を察して顔を俯けた。
「……“シャボンディ諸島”の街に入ると、“聖地マリージョア”の住人である『世界貴族』が歩いていることがあるわ……」
「『世界貴族』……」
「ええ」
会話をしながら、不穏な空気が流れ始める。一体、アユナはみんなに何を伝えようとしているのか……。
「私が言いたいのは……たとえ、町でどんなことが起きても『世界貴族』に危害を加えないと約束してほしいの……“目の前で人が殺されたとしても”、見て見ぬフリをして……ほしい……」
「!?」
一同は目を見開いて、愕然とした。ーー命を大切にしろとあれ程、自分たちに言っているアユナがそんなことを言い出すなんて、夢にも思わなかったからだ。だが、先の戦いで水神海賊団はその発言をした理由に心当たりがあった。