第52章 〈偉大なる航路〉前半の海
(この先……)
ーどんな出会いがあるんだろう。どんな出来事があるんだろう。
「ミーウ……さん……」
甲板の方から、声をかけられて振り返る。そこには、少し前に仲間になったばかりのユイがいた。ミーウは船首から飛び降りて、ユイの目の前に行った。
「ユイ……」
ミーウは小さい彼女に合わせて、少し屈んだ。そして、ユイの鼻を軽くつまんだ。
「いひゃい!」
「呼び捨てで呼んでってお願いしたじゃない!」
ミーウはユイの鼻から手を離した。
「そんなこと言われても……」
葡萄色のジト目で見上げられる。ーー最初に出会った頃のことを思えば、だいぶ心を開いてくれているし、感情も表に出るようになった。
「わたしは……この船で1番年下ですし……」
「そんなこと言わないの」
ミーウはユイの小さい頭を撫でた。
「ユイが来る前はわたしが1番年下だったのよ? それでも、わたしはみんなのこと呼び捨てで呼んでるし、敬語も使っていないわ」
「それは、ミーウ……さんが船長だから……」
「……」
ミーウはまた、ユイの鼻をつまんだ。
「いひゃい! どーしてこんにゃことしゅるんでしゅか!」
「ユイが呼び捨てで呼んでくれないからよ」