第52章 〈偉大なる航路〉前半の海
上の方で1つに括られた髪の毛を海風が撫ぜる。
ーキッド、1対1で勝負よ!
ーあァ、挑むところだ!
ーおれのことを侮ってもらっちゃ困るぜ。おれは海賊王になる男だからな。
ー……海賊王になるのは……このわたしだよ。
ーハッ、言ってろ。その夢……おれが叩き潰してやるよ。
ー本気でかかって来い! ミーウ! 手加減なんかしたら、承知しねェぞ!
ーわたしが何のために海に出たと思うの? あんたを倒すためだって言ったでしょ!
ーおれを倒すつもりなら、本気でかかって来いよ! “秒殺の女帝”キルリレ・ミーウ!
ー覚悟しな! ユースタス・“キャプテン”・キッド!
ー……随分、生意気なことしてくれるじゃねェか! やれるもんならやってみやがれ!
ー……まだそんなことができる体力が残ってたのか。
ーそっちもね。もう限界かなって思ってたのに。
ーはっ、馬鹿にすんじゃねェ。
ーおれはまだまだ余裕だぜ?
ーそう来なくっちゃ、張り合いがないじゃない。
ーキッドと戦った時のことを、遠い日のことのように感じる。つい、数ヶ月前の話だと言うのに……。
「……今頃、どこにいるんだろうね……」
ビブルカードを握り締める力が強くなる。