第42章 知られたくなかったこと
「そう、なのか……」
エースは目を細めて俯いた。
「……こんな話をしてしまって……ごめんね……」
ミーウは涙で濡れた目元を手で拭った。
「素性がバレてしまったから……話しておこうと思って……」
ミーウは暗い顔をした。
「軽蔑するなり、情報を売るなり、殺すなりしてもらって構わないわ」
「ミーウ」
ミーウの言葉にアユナは驚いて声を上げた。
「いいのよ」
ミーウは自分を軽蔑するように鼻で笑った。
「いつか、誰かに話すことになった時のことを想像して……覚悟はしてたの」
ーー自分を虐げる目。憎くて仕方ないと歯を食いしばる口。刀を自分に向ける手。様々なことを想像した。
「……」
「エースも……憎いでしょ? 天竜人が……。義兄弟を殺されて……」
ミーウは作り笑顔で言葉を発する。
「だから……」
「おれは……」
エースはミーウを真っ直ぐ見据えた。
「軽蔑もしねェ、情報も売らねェ……」
ミーウの瞳が揺れる。
「ミーウを殺すこともしねェ」
「……」
エースは瞳を逸らすことなく言った。
「天竜人は確かに憎い。どれだけ殺したいと思ったか、わからねェ……」
ーサボの船が燃やされた時、すぐに奴らのところに行って殺してやろうと思った。ダダンが止めなかったら、きっとそうしてた。
「だけど、サボを殺したのはミーウじゃねェ。ミーウは関係ねェ」