第42章 知られたくなかったこと
「それと、もう1人いた」
「もう1人?」
「あァ」
エースは目を細めた。
「誰かは分からねェ。暗くて、顔は良く見えなかった」
ーーたった一瞬だけ、炎の明かりで見えたのは金髪のふわふわした髪の毛にシルクハットを被った男だった。だが、瞳はゴーグルをしていてよく分からなかった。左目の辺りに傷痕があったような気がする。
(なんだか、懐かしい気がしたが……)
ーきっと、気のせいだ。
エースは左腕に彫られた刺青の「S」の文字の触った。
「ミシュラ、エース」
エースとミシュラが話していると、後ろの扉の向こう側からアユナの声がした。
「準備ができたわ。……入っても大丈夫よ」
「わかった」
エースは立ち上がり、扉を開けた。先程までいた部屋にはミーウの能力で顕現した氷の台にクッションが乗せられており、その他に氷の椅子が2つ用意されていた。
「……座って」
氷の台に座ってクッションに背中を預けたミーウがエースに言った。ーーくまとの戦いでボロボロになった服は着替えられ、白いノースリーブの丈の長いワンピースに白に近いグレーの長いショールを羽織っている。
エースは言われるがまま、ミーウの目の前に用意された椅子に座った。