第42章 知られたくなかったこと
ー何も言わずに来てしまった。最後に会った人物は……。
(エース……)
ーああ、そう言えば……あなたのことも思い出せないままだった。あの世に行けば……思い出せるだろうか?
「後悔は……ないか……」
「……」
ー後悔。ーーもともと、なかったはずだったもの。7年前のあの日、祖母を目の前で失ってからどこで誰に殺されてもいいと思っていた。だが……。
(みんな……ミシュラ……アユナ……お母様……クザン……キラー……)
ーキッド……。ーー今まで出会ったたくさんの大切な人々。その人たち、全員を置いて行ってしまう。
(嫌だ……)
ーまだ、死にたくない……。ーーみんなに……また、会いたい。
ミーウは目を閉じた。
ーー苦しい。肺がやられてしまっているのだろうか。
頭上で空気が集まっている音がする。
(もう……)
ー終わりだ。
「火拳ー!」
ミーウがそう思った時、頭上で空気の塊と炎がぶつかった。
「ミーウ! 大丈夫か!?」
「……ハァ……エ……ス……」
「まだ息はしてるな!」
エースは倒れているミーウをあまり刺激しないように、ゆっくりと仰向けにした。
「!?」
ミーウを横抱きに抱き上げようとした瞬間、シルクハットを被ってゴーグルを付けた男が鉄パイプで攻撃をして来た。