第41章 思い出せない記憶
それから、ネックレスが出来上がるまでの時間、ミーウとエースは黙ってお店の椅子に座っていた。
「出来たぞ」
そこへ、老人が奥の作業場から出てきた。
「ほれ」
老人はミーウへネックレスの写真を渡した。
「え、でも……」
ミーウはエースの方を見た。
(エースも欲しいんじゃ……)
ミーウの様子を見て、それを察したのか、エースはいつものように笑った。
「お前が持ってろ」
「でも……」
「また、忘れたなんて言われたら困るからな」
「……」
ミーウはエースの黒い瞳を見つめた。
「大丈夫。おれは忘れねェ」
「……わかった」
ミーウは笑った。
「ありがとう」
そして、老人の方を向いた。
「ありがとうございました」
「ああ」
老人はにこやかに微笑んだ。
「青年、お前にはこれをやろう」
老人は近くに置いてあった机の引き出しから、ある物を取り出した。
「少し前に、わしが作った指輪じゃ。持ってけ」
「じいさん、それは悪ィよ」
エースは眉根を下げて断った。
「これはわしの気持ちじゃよ。お前さんも、これを見ればお嬢ちゃんのことを思い出せるじゃろ」
老人は真剣な顔でエースに言った。
「……わかった」