第41章 思い出せない記憶
「この人……昔のおじいさん……?」
「そうじゃよ」
微笑みながら、おじいさんは顎髭を撫でた。
「この歳になるとな、忘れたくなくてもどんどん昔のことを忘れてしまうんじゃ。だがな、写真を見ればすぐに思い出せる。この時はこんな大変なことがあった。この時に大切な人に出会えた」
老人はミーウを見た。
「お嬢ちゃん、お代を頂く代わりに、わしとの約束じゃ」
そして、少しずつミーウに近付いた。
「あの青年を、もう忘れないでやってくれ。お願いじゃ」
「……わかりました」
ミーウは微笑んだ。
「約束します」
ミーウはエースの方を向いた。
「エース」
そっと、自分の小指を出す。
「約束。もう、あなたのことを忘れない」
「……あァ」
エースは優しい笑顔で笑った。
「約束」
2人は約束を交わした。ーーもう2度と、相手を忘れないと……。
「さあ、記念に写真を撮ろう」
老人はカメラの後ろへと移動した。
「お嬢ちゃん、あの椅子に座りなさい」
「はい」
ミーウは老人に言われるがまま、椅子に座った。
「青年は……お嬢ちゃんの後ろに立って……」
「おう」
エースは座っているミーウの後ろに移動し、ミーウの肩に腕を回して少し前屈みなって、ミーウの顔を自分の顔を近付けた。