第36章 それぞれの旅へ
「あ、あァ」
「やったー!」
ミーウは本当に嬉しそうに両手を上げて喜んだ。
「それで、何を歌ってくれるの?」
「……おい、お前ら」
「はい!」
キッドは後ろにいた部下たちに声をかけた。
「……“あれ”を用意しろ」
「……え、でも、頭、もう出発……」
「いいから! あれを用意しろ!」
「は、はい!」
キッドの部下たちは慌てて、船の中にある“あれ”を取りに行った。
「?」
しばらくすると、部下たちが大きなものを運んできた。
「……これ……」
「ミーウ」
「ん?」
「昔、おれが歌った曲、覚えてるか?」
「……うん」
「それ歌ってやるよ」
「本当!?」
「あァ」
そう言うと、キッドはバンド用のマイクの元に行った。他の船員たちはギターやベース、キーボードの位置についている。キラーはドラムローンに座った。そして、キラーの合図で曲が流れ始めた。
「♪〜やわらかな風が吹く この場所で〜♪」
その曲は昔、大楠の下でキッドが歌ってくれた曲だった。
(あの時は楽しかったな……)
ー4人で毎日一緒に遊んでいた。夢を語り合った。
(この曲を歌ってたのはいつ頃だっけ……)
ーそんなに昔じゃない気がする……。それでも、あの頃より確実にキッドの歌は上手くなっていた。