第4章 すれ違う心
『お前が足手まといになるからだ』
「……っ」
ミーウの目からは涙が止まらない。
キッドはその間、目を閉じて深呼吸をしていた。
「……じゃァな。ミーウ」
(幸せに暮らせ……)
そう言い残して、キッドはその場から立ち去った。
大楠の丘には、ミーウだけが残された。
南の海に吹く涼しい夜風が大楠の葉と彼女の黒髪を揺らしている。
「……」
ーーまた、嘘をつかれた。
「……」
一瞬、ミーウの脳裏を横切った光景は7年前の記憶……。
ーー荒れ狂う炎の中に、1人の大きな人影が立っている。その人影は口を開いた。
『ミーウ。嘘をついてて、すまなかったな』
その人は何の感情も持たない瞳でミーウを見つめていた。ーー恐怖と絶望の記憶……。
「……キッド……」
ミーウは両耳を両手で塞いで、今はもうここにはいない青年の名を呼んだ。
「……キッド」
ミーウは膝をついて、その場にしゃがみ込んでしまった。
+