第4章 すれ違う心
「ミーウ……すまねェ」
キッドはミーウを強く抱き締めながら、彼女の耳元で小さく言った。
キッドは気付いていなかった。ーーミーウに対してある特別な感情を抱いているということを。
キッドはそっと彼女から離れた。そして、黙って後ろを向いた。
「キッド、待って!」
ミーウは泣き叫んだ。
「何で置いて行くの?」
「……」
キッドは黙ったまま答えない。
「答えてよ!」
ミーウは語尾を強くしてさらに強く叫んだ。
「……」
「キッド!」
「黙れ!」
キッドは叫び返した。人々が恐縮してしまうくらい強く。
ミーウは反射的に固まってしまった。
キッドは彼女を振り返らずに言った。
「お前が……」
ーー本当は言いたくない。だけど……もし言わなかったら、ミーウを危険な目に遭わせてしまうかもしれない。彼女はどこまでも自分について来てしまうだろう。
(お前は優しくて、明るくて、無垢で……)
ーーそんな女だから、海賊ではなく普通に暮らしてほしい。ーーそれはキッドの心からの願いだった。
「お前が足手まといになるからだ!」
キッドは目を瞑って力一杯叫んだ。
ミーウは口を手で押さえた。声も出さずに、悲鳴を上げる。
キッドは振り返らない。
2人の間には少しの間、沈黙が流れた。