第4章 すれ違う心
「わたしをキッドが乗る船に乗せて、海に連れてって」
ミーウは再び震える声で言った。その彼女の目には涙が溜まっていた。ーー8年前も同じ言葉を言ったが、表情は真逆だ。8年前は笑っていた。だが、今は……。
「お願い……」
ミーウは泣いていた。ーー自分でもどうして、こんなに切実に願っているのかわからない。でも……。
ミーウはキッドの赤い瞳を見つめながら言った。
「行かないで……」
ーー自分の心が叫んでいる。声が枯れるほどに。
(わたしを……海に連れてって……)
ーー自分を連れてって欲しい。キッドに一緒に連れてって欲しい。ただ、それだけで……。
「キッド」
ミーウは泣くのを堪えて、キッドの名を呼んだ。ーーミーウの一族、“伝説の天竜人”の血を受け継ぐ者は人の前で泣いてはいけないという決まり事があった。ミーウ自身、その理由は聞かされていないが……。
だが……我慢できずに、ミーウの白い頬を一筋の涙が流れた。
そんなミーウの様子を見ていたキッドは胸が締め付けられるように痛んだ。
(……ミーウ)
キッドはミーウを引き寄せて抱き締めた。無意識に抱き締めていた。ーー抱き締めたくなった。とてもか弱くく、小さな少女を。