第4章 すれ違う心
キッドはそれだけ言って、ミーウの横を通って帰ろうとした。しかし……。
「!」
キッドは肩を少し震わせた。
「……ミーウ……」
ーーミーウがキッドの大きくて、たくましい手を掴んだのだ。
「ミーウ、離せ」
ーーこのままじゃ……。
(海に出れなくなっちまうだろ……)
キッドはこの島でのミーウたちとの生活が楽しくて、未練がましく思っていたが、それを振り切って出航することにしたのだ。ーー彼女たちを傷付けないために。
そう考えてから、キッドはハッとして息を呑んだ。ーーミーウの手はとても小さく、少しでも強く握れば潰れて折れてしまいそうだった。
(……やっぱり……)
ーーこいつを連れて行くことはできない。こんなに小さくて、細くて、危なっかしいこいつを連れて行くことはできない。ーー本当は連れて行きたい。みんなで……4人で航海をして、いつもみたいに笑っていたい。だけど……。
「ミーウ!」
ーー今はそんなことを考えてはいけない。自分のわがままのせいで、ミーウが傷付くのは絶対に嫌だ。ミーウが……死ぬようなことになるのは絶対にごめんだ。
「……嫌だ……」
ミーウの声は震えていた。キッドの手を掴んだミーウの手も……同じように震えていた。
キッドが振り返ると、ミーウは真っ直ぐな瞳でキッドを見つめていた。ーーミーウの目の色は紅だ。キッドはその瞳の色が好きだった。1日の終わりに自分たちを優しく照らす夕焼けのような優しい色の瞳が……。
キッドがそんなことをぼんやり考えていた。