第35章 夕焼けの意味
ミーウはまた俯いた。
「おい、ミーウ。ちゃんと聞いてんのか?」
キッドはミーウの顔を覗き込もうとした。
「……見ないで……」
ミーウは消えるようなか細い声で、キッドに言った。
「は? 何でだよ」
キッドはミーウに自分の方を向かせようとして、ミーウの頬を触って顔を上げさせようとした。しかし……。
「……! ミーウ、お前……」
ーーキッドは水に触れた感覚がした。
「……」
ミーウはキッドの胸に顔を埋めた。
「!? おい! ミーウ!」
「キッド……」
ミーウは消え入りそうな声で、キッドを呼んだ。
キッドはその声を聞いて、頭を掻いた。ーーその声には弱い。
「……何だ? ミーウ」
「しばらく……このままでいても、いい?」
キッドはミーウの黒くて長い髪の毛を指でといた。ーーミーウは目覚めたばかりだったため、今はいつものように髪の毛を結んでいなかった。
「あァ」
ー気がすむまでそうしてろ。
「……」
ーーミーウはキッドの優しい言葉を聞いた瞬間、涙が止まらなくなっていた。
(ずっと……)
ーそんな風に言われたことがなかった。この瞳は血の色なんだと思い続けていた。なのに……。
(何でそんな風に言えるの?)