第34章 月夜の悪戯の魔法
ちょうどその頃、アユナとキラーは水神海賊団の船の近くにいた。ーーアユナは送らなくても大丈夫だと断ったのだが、賞金稼ぎが近くにいた以上、まだ潜伏している可能性があり不安に思ったキラーが無理矢理ついてきたのだ。
「……アユナ」
「うん……」
アユナはキラーを見て、寂しそうに笑って頷いた。一度覚悟は決めたものの、やはり別れるのは寂しい。
「……」
ーもう少し一緒にいたいなんて。ーーそんなのは、自分のワガママだ。
「……アユナ」
キラーはアユナに近付き、背に手を回してアユナを抱き締めた。
「キラー……」
「お前と……」
キラーはアユナの肩に顔を埋めた。
「離れたくない」
「!?」
アユナはびっくりして、キラーの方を向こうとした。すると、仮面を外したキラーの瞳と目線が交わった。
「え……」
キラーは口の端を上げた。そして、アユナのこめかみに口付けた。
「へ!? あ、キ、キラー!?」
アユナは真っ赤になって、背中を仰け反った。それをキラーは片手で支える。もう片方の手で仮面を再び装着した。
「すまない。つい……」
(本当はお前に想いを伝えたい……)
ーだが、それは今じゃない。そんな気がした。