第34章 月夜の悪戯の魔法
「そ、そうだけど。でも、キラーは……」
「おれはそういうのを気にしないから、別にいい」
アユナは未だに困ったような顔をしているが、キラーの言葉に渋々頷いた。
キラーはその様子にクスッと笑い、アユナを後ろから包み込んだ。
「あ……」
アユナの心臓はまた、早く脈打ち始めた。頬が熱くなる。
「アユナ」
「な、何?」
包み込む腕に力が入る。
「もう少しだけ、このままでいたいと言ったら……お前はどうする?」
「え……」
キラーはアユナを包み込む腕にさらに力を加えた。2人とも前屈みになる。アユナは顔を真っ赤にさせた。
「……」
(正直になりすぎたか……)
ー昨日、船医に言われた言葉を実践しただけなのだが……。
(迷惑だったか……)
「アユナ、その……」
「い、いいよ」
キラーが言うよりも早く、アユナが言葉を発した。
「わたしも……キラーと一緒にいたい」
「……」
ー自惚れてもいいのだろうか……。
どちらの音かわからない、心臓の大きな音が響く。
「ありがとう」
ーー遮るものがない空間で、2人の鼓動が木霊する。
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