第34章 月夜の悪戯の魔法
「……そうか」
キラーはそう言うと、アユナを抱き上げた。ーーお姫様抱っこで。
「え、キラー?」
キラーはアユナをしっかりと抱えて、海から出て波が届かない砂浜に腰を下ろし胡座をかいた。そして、アユナを胡座をかいた時に開けておいた場所に座らせた。
アユナはキラーにあまり負担をかけないようにと、足を砂浜の上に置こうとした。しかし……。
「アユナ、やめろ」
「え?」
キラーはアユナの足を折り畳ませて、自分の足の上にのせた。
「で、でも、これじゃあ、キラーが……」
「おれは大丈夫だ。心配ない」
それでも、アユナはまだ不満そうな顔をしていた。
キラーはアユナの顔を見て微笑んだ。
「おれだって海賊だ。女の1人くらいの体重がかかっても、何てことはない」
キラーはアユナの綺麗な漆黒の髪の毛を指でときながら口を開いた。
「それに……お前の足に砂が付くだろう?」
「あ!」
アユナは自分の足を見た。まだ乾いていなくて、海水が付いている。
「でも! それじゃあ、キラーのズボンが……」
ーー今、キラーのズボンは海に入った時に濡れた部分に砂が付いているはずだ。
「おれのズボンは別に洗えばいい。だけど、アユナは船に帰るまでに砂が付くと……気持ち悪くて嫌だろ?」