第34章 月夜の悪戯の魔法
ーー夜9時少し前。キラーはイライラしていた。理由は……。
「ヒャッハー! あのキッド海賊団に出会すとは運がいいな!」
「しかも、手負いとは! こんなチャンス二度とないぜ!」
「やっちまえ!」
賞金稼ぎたちの襲撃があったからだ。
(クソッ!)
ーこのままでは、約束の9時になってしまう。
「“殺戮武人”のキラー!」
倒しても倒しても次から次へと賊が現れる。
(アユナ……)
ーーキラーはふと、この襲撃が水神海賊団の方でもあったとしたら……と考えた。
「……」
(マズい……)
ー向こうは船長であるミーウが動けない上に、他の戦闘員たちも手負いだ。こちらよりも分が悪い。
「邪魔だ!」
キラーは鎌で次々と敵を倒していく。だが、キリがない。
「キラーさん!」
そこへ、船員が1人手助けに来た。
「話は聞いてます! 行ってください!」
「!? お前、何言って……」
「何って、好きな女の子のところに行く約束があるんですよね?」
「なっ……」
キラーは呆気に取られた。
(船医……)
ーー犯人は言われなくてもわかっている。
「キラーさん! 早く!」
船医の口の軽さに怒りを覚えたが、今はそれどころではない。
キラーは敵を1人斬り、ある“物”が入った袋を持った。
「すまない。後は頼んだ!」