第34章 月夜の悪戯の魔法
いきなりの事にアユナはびっくりした。
耳元では走って来たのか、乱れた呼吸、まぎれもないキラーの体温があった。
「キラー……?」
「……こんな暗い海で、1人で突っ立っているな……消えるかと、思った……」
「……え……」
ーまさか、消えるわけないじゃない。
しかし、キラーの不安げな声に、思わずその言葉を飲み込んだ。
ーーキラーは本当に消えると思ったのだ。だからこうして、息を切らしてまで逃すまいとした。
「……キラー?」
「しばらくこのままでいていいか?」
「……うん」
「アユナ……」
キラーはアユナをより強く抱き締めた。
「もう……来てくれないのかと思った」
目を伏せると、海面に数滴雫が落ちた。
「すまなかった……。また、約束を守れなかった……」
キラーはアユナの肩に顔を埋めた。
「キ、キラー?」
アユナは動揺して、後ろを向いた。
「でも、お前が無事で……よかった……」
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