第33章 それぞれの想い
「これをやってくれたお嬢ちゃん、キラーさんのことをとても大切に想ってくれているんだな」
それを聞いて、キラーはびっくりした。
「そ、そんなはずはない! アユナは……」
「アユナっていうのか。そのお嬢ちゃん」
「……」
キラーは黙って、船医を睨んだ。そして、再び鎌を出そうとした。
「ぼ、墓穴を掘ったのはキラーさんじゃないか!」
「……確かにな」
そう言って、キラーは睨むのをやめ、鎌を出すのもやめた。
「でも、さっきのドア越しの独り言だと、まだ想いは伝えていないようだな?」
「……」
暗い部屋に反射した何かがギラギラと光っている。
「す、すまなかった! 許してくれ!」
いよいよ鎌を取り出したキラーを船医は全力で止めた。
そんな茶番をしている内に、キラーも気持ちが落ち着いたのか、腰を下ろして座った。船医もその隣に座る。
「……なあ……」
「何だ?」
キラーは隣にいる船医に聞いた。
「ちょっとだけ……昔話を聞いてくれるか?」
「ああ、いいとも」
ーー船医は時々、キッドとキラーの相談役もやっている。
「おれの初恋は13だったんだ」
キラーは天井を見上げた。
「一目惚れだった。あいつを見た時、恋に落ちた……。今まで、恋愛なんてしたことなかったのにな」