第33章 それぞれの想い
「……誰にやってもらったんだ?」
「……自分でやった」
船医はため息をついた。
「自分たちで怪我の手当てをすることができないから、おれを乗せたんだろ?」
「……」
「わかりやすい嘘をつくな」
船医はキラーの右腕を見た。
「それにしても丁寧に手当てされているな~」
「……」
「本当に、誰にやってもらったんだ?」
船医はキラーを見た。
「……」
「おれの見立てだと女なんじゃないか?」
キラーは驚いた。
「何でわかったんだ?」
船医はニヤニヤと笑った。
「女なのか~。おれは適当に言ったのにな~」
キラーはそれを聞いて、鎌を出そうとした。
それを見て、船医は急いでキラーを止めた。
「や、止めろ! 冗談だ! ちゃんと理由はある!」
船医は叫んだ。
「この船で、おれ以外にこんなに丁寧に手当てできるやつはいないからだよ! それに、女じゃないとこんなに綺麗には結べない!」
「……」
キラーは黙った。言われてみれば、船医の言う通りだからだ。キラーは座った。
ホッとした船医はキラーの右腕に巻いてある包帯を確認した。
「包帯の巻き方もちゃんとしてるし、手本みたいに綺麗だな~」
キラーは船医を睨んだ。
「はは、そんなに睨むな。でも……」
船医は穏やかな目でキラーを見た。