第33章 それぞれの想い
「……」
「……わかった」
キラーはアユナの方へ近寄り、アユナの腰に手を回した。そして、自分の方へと抱き寄せた。
「キ、キラー!?」
マスクをしているとは言え、一気に近くなった彼との距離にアユナは胸が大きく音を立てた。
「明日の夜9時、お前のことを攫いに来る」
「……え……」
胸の音がさらに高鳴る。アユナは仮面の奥にある彼の瞳と目を合わせた。
「船で待っててくれ」
キラーは腰に手を回してない方の手で、アユナの頬を包んだ。
「またな」
キラーはそう言って、アユナから手を離し自分の船の方へと走って戻った。
アユナはその後ろ姿を見送った。
「……なんか……」
(怪盗みたい……)
ー昔、おとぎ話で読んだお姫様の心を盗みに来る怪盗……。
そう思って、アユナは顔を真っ赤にし、急いで自分の船へと戻った。
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