第32章 戦いの果てに
ミーウがもう1度キッドの名前を呼んだ時、ぽつりぽつりと雨が降ってきた。
「キッド?」
ぽつぽつ
何回呼んでも、聞こえてくるのは雨の音ばかりで、キッドからは何も返事がなかった。ーー何の反応もなかった。
「嘘、だよね。キッド」
ミーウはキッドが寝ているすぐ横に座った。
雨は段々強くなっていく。
「……おれは死なない。絶対になって……言ったじゃん!」
ミーウの紅い瞳には涙が溜まっていた。
「キッド……」
そう言って、ミーウは自分の首にかけてあるビブルカードのネックレスを見た。
「……」
キッドのビブルカードは小さくなってはいたが、まだ消えていなかった。
(……まだ、死んでない)
ーキッドはまだ、生きている……。
ミーウはそう思ってから、キッドをまた見た。
ーおれの夢は海賊になって、〈ひとつなぎの大秘宝〉を手に入れることだ。
ーG・ロジャーみたいになるんだ。
あの自信に満ち溢れた笑顔を思い出して、ミーウはふっと柔らかく笑った。
「バカじゃないの」
ミーウはキッドの真紅の髪の毛を触った。ーー髪の毛は雨に濡れてびしょびしょになっていた。
「海賊王になるだったら……こんなところでくたばらないでよ」
ーこんなところで……わたしに負けないでよ。
「あんたは……」
ー海賊王になる男なんでしょ? キッド……。
ミーウはキッドの髪を触っていた手を移動させて、キッドのオデコにそっと乗せた。
「……」
(キッド)