第32章 戦いの果てに
「キッドのだ」
「……」
ー思った通りだ……。ーーミーウがキッドと会った時の反応を見て、薄々気付いていた。
スレイジは少しだけ顔を俯かせた。
「……おれ、昔聞いたことがあるんだ」
スレイジは地面を見つめながら、ぽつりぽつりと話し始めた。
「ビブルカードを何かの用事以外で人に渡す場合……」
スレイジはゆっくり顔を上げて、キラーを見た。
「渡した人は渡された人のことを誰よりも大切に想っていると。だから、ビブルカードを持っている人は貰った人にどこかで会えるんだと。そして、たまにその人の声を聞くことがあると。……そう聞いた」
「……」
キラーは黙った。
ーその人の声を聞くことがあると。
「……」
(なるほどな)
ーーキッドは何回か、キラーと一緒にいる時にミーウの声が聞こえたと言っていた。それは……ビブルカードにそんな言い伝えがあったからなのかもしれない。
「あいつが……ユースタスがどんな気持ちで、ミーウにビブルカードを渡したかは知らねェけど……ユースタスはミーウのことを大切に想っているのか?」
「……」
キラーはまだ黙っている。
「……答えろよ。“殺戮武人”」
スレイジは苦しそうな瞳でキラーを見た。
「……」
ーこいつ……。
(ミーウに惚れてるのか……?)
キラーは小さくため息をついた。
「……おれにはわからないが……」