第32章 戦いの果てに
トーダとヒートはあれから、ずっと戦わずにお互いを見つめていた。
「……」
「……」
ーおれが戦う前に言った言葉、覚えてるか?
ヒートはその言葉を聞いて、少し考えてから答えた。
「お前が言ってるのは、決着は着かないだろうぜって言ったことか?」
「ああ、その通りだ」
トーダは胸の前で腕を組んだ。
「普通に考えて、炎の技と炎の技で勝負をしたら……決着が着くどころか、かえって炎がでかくなって、街に被害が出るだけだろう? おれは一般市民に危害を及ぼすようなことはしたくない」
「確かにな」
ヒートはトーダの言葉に頷いた。
「このまま戦いを続けたとしても……何の得もないだろうな。それくらいなら……この戦いは一旦中断にして、また次、〈偉大なる航路〉で会った時にやるのが得策だな」
それを聞いて、トーダは驚いた顔をした。
「……お前、本当にあのユースタス・“キャプテン”・キッドの船に乗っている船員で幹部なのか? 随分、物わかりがいいな」
「頭をバカにすんじゃねェ。あの人は新聞ではとても残酷な人だと書かれているが、実際は心が広くて優しい人なんだよ」
トーダはそれを聞いて笑った。ーー誰かに似ているような気がしたからだ。
「すまない」