第14章 君の温もり
キッドは酒の入っているグラスをぐいっと呑み干した。そして、再びグラスに酒を注いで、不意に立ち上がった。
「キッド?」
キラーがキッドに声をかけたが、その声はキッドには届いていなかった。
キッドは甲板の柵の近くまで来ると、酒を呑みながら綺麗な月が映る真っ暗な海を見た。
「今日は三日月か」
キッドは海に映った三日月を見て言った。そして、顔を上げた。
「綺麗だな」
雲1つない夜空にかかっている三日月は本当にとても綺麗だった。
「……」
(こんな夜には、あいつの顔が脳裏にチラついてならねェ)
ー自分を追いかけているであろう、1人の少女が。
「……」
キッドは翻して、もともと自分がいた席に戻ろうとした。
ーねェ、キッド。
「!」
キッドはハッとして、海を見た。
(今の声……)
「ミーウ?」
キッドは呟いた。
「頭、ミーウって誰ですか?」
「!」
キッドは船員たちを振り返った。
「てめェら、聞いてたのか?」
「聞こえますよー。そんな遠いところにいるわけでもねェですし」
「……」
キッドはそれを聞き、黙ってしまった。
「頭の女ですか?」
「違ェ」
「じゃあ、紹介してくださいよ」