第14章 君の温もり
スレイジは部屋の扉を開けて、中へと入って行く。
ミーウもそれに続く。
「これだ。おれの気になるもんってのは」
スレイジは“それ”のあるところまで来ると、床を指差した。
ミーウは指差された“それ”を、床に膝と手をついて見つめた。“それ”は……。
「これ……ひび?」
“それ”とは、床に大きく入ったひびのことだった。
ミーウはそっとひびを触る。
「……もしかして、結構深く入ってる?」
「かもしれねェ」
「……」
ーーまだ、航海をしてから1週間くらいしか経っていない。
「……こんなに早く船に傷ができるものなの?」
ミーウはひびを見ながら言った。
「おれにはわかんねェよ。そんなのは専門外だ」
「……」
(確かに……)
ミーウは黙った。ーーミーウはシェルミーから幼い頃に航海術を教わったことがあるため、船長兼航海士をやっている。アユナは城で料理を手伝っていたことと、能力の関係で医学の知識も身につけているため、コック兼医者をやっている。ミシュラとスレイジは主に戦闘要員として、船に乗っている。
「わたしたちの船には……船大工を乗せていないもんね……」
ーーミーウの言う通り、ミーウたちの船には船大工が乗っていないし、船の手入れや修理を行える者がいない。そのため、メンテナンスをしていない船は日に日に壊れていく一方だった。もともと古かったとは言っても、天竜人の持ち物だ。そう易々と壊れるようなものではない。城にあった時には海兵たちが定期的にメンテナンスをしていたようだが……今はそれもない。