第10章 あなたのためなら
「そ、それは……」
ーー確かに、アルファに蹴飛ばされた時、突然のことだったので、ミーウは受け身をとることができなかった。
「で、でも、こんな傷……」
「……」
キッドはミーウをそのまま抱き寄せた。
「キ、キッド!?」
「もう……」
キッドは小さく、ミーウの耳元で囁いた。
「もう、お前を傷付けさせない。おれが絶対守る」
ミーウを抱き締める力を強くして、キッドは言った。
「……」
(キッド……)
ミーウがキッドの顔を見上げようと思った時だった。
ヒュー!
ヒューヒュー!
いきなり、口笛の音が聞こえた。キッドとミーウは驚いて、辺りを見渡した。
「お熱いね〜2人とも!」
「見せつけやがって〜!」
「よ! 坊主! カッコいいぞ!」
街の人たちはニコニコ……と言うよりも、ニヤニヤしながら2人を見ている。
「ち、違ェよ! 勘違いすんな!」
キッドは顔を茹でダコのように赤くして、ミーウからパッと離れた。
「無理しなくてもいいんだぜ? 若い頃にゃ、誰にでもあるもんだ」
「そうだぞ〜。あ、そうだ! こんな日にゃ、一杯飲まねェとな!」
ある男の人が酒を呑む動作をした。
「お、いいね! よし、みんなー! 宴だー!」
「おー!」