第10章 あなたのためなら
老人はにこりと笑って、ミーウに背を向けた。
「君は自分の存在をどう思っているかわからんが……」
老人は顔だけをミーウに向けた。
「少なくとも、誰かの希望にはなっとるよ」
「……」
老人はそのまま街へ戻ってしまった。
「ミーウ」
名前を呼ばれて、ミーウは振り返った。
「……キッド」
ミーウはクスッと笑った。街の人々に感謝の言葉を述べられたり、胴上げされたりで疲れた様子のキッドがそこにいた。
「……何がおかしいんだ」
「ううん……」
笑いを堪えながら、ミーウはキッドに向き合った。
「全く……おれは海賊になるんだぞ。なのに……」
「ふふ、いいじゃない」
ミーウはニコッと笑った。
「人助けをする海賊も悪くないんじゃない?」
ーね? 未来の海賊王。
「……まァ……」
キッドは顔を少し赤らめて頭を掻いた。
「あーそういや、ミーウ。お前……怪我はいいのか?」
「怪我?」
ミーウは自分の体を見た。
「怪我なんてしてないけど?」
「……」
キッドはミーウに近付き、ミーウの左上腕を握った。
「痛ッ!?」
「やっぱりな」
キッドは呆れたようにため息をついた。
「お前、最初アルファに蹴り飛ばされただろ」
「……」
「あの時、ちゃんと受け身をとれてなかった」