第10章 あなたのためなら
「1人で生きるということは……大変なことだな……。彼はずっと、盗みをしながら生きていた」
「!?」
ミーウは老人の言葉を疑った。
「……盗み?」
「そうだよ。ここら辺では有名な泥棒だった。生きるために……物を盗んでいた」
「……」
「でも、数年前から少し変わったんだよ」
「……変わった?」
ー盗みをしていたキッドが?
「盗んだことを街の人に謝ってな。働いて返すって言って……それと同時に、夢を語るようになった」
「……夢?」
「そうだよ。〈ひとつなぎの大秘宝〉を手に入れるという夢さ」
「!?」
ミーウは驚いた。
「きっと……彼が変われたのは君のおかげなんだね」
老人は優しく微笑んだ。
「彼はこの島のためじゃない……君を守るために、海賊と戦ったんだよ。そうじゃなかったら、あんなに早く能力を使えるようにはならない」
ーー誰かを守りたい。その想いが人間を強くする。
「……おじいさん」
ミーウは老人を見た。
「……おじいさんは……何者なの?」
ーーミーウの正体を知っていて、海軍にいた。そして、悪魔の実の能力についても詳しい。そんな人物。
「……わしは……遠い昔、シェルミー様に仕えていた……ただの元海兵さ」