第10章 あなたのためなら
竜国島の人々はキッドのことを褒め称えた。ーー1人の女の子を救い、島の危機を救ったのだから、当然であろう。
「お嬢ちゃん」
1人の老人がミーウに声をかけた。
「お嬢ちゃんもありがとうね。この島に海賊が来た時はどうなることかと……。海軍大将がいるとは言っても、やはり心配で心配で……」
「そんな……」
ミーウは微笑んだ。
「わたしは何も……」
「実はな」
老人はにこりと微笑んだ。
「わしは昔、海軍にいてな。そこそこの位を貰っていたんだよ」
「!?」
「もちろん、お嬢ちゃんの正体も知っている。奴らが何を狙ってやって来たのかも……なんとなく、検討がつく」
「……ごめんなさい」
ミーウは項垂れた。ーー自分の存在がこの島の人々を危険にさらしてしまったということに罪悪感を抱いているのだ。
「どうして謝るんだ?」
「だって……」
「あれを見てみなさい」
「?」
ミーウはみんなに胴上げをされているキッドを見た。
「彼は……ずっと、キラーという子供と2人で過ごしている」
「……」
「キラーに会う前は1人で生きていた。生まれた時から、1人だったんだよ」
ミーウは目を細めた。ーー少し前に聞いていた。キッドはずっと1人だったということを。