第10章 あなたのためなら
「スーザ、今すぐこの島の海軍に向かって放送を流せ! 海軍だけじゃなくて、一般市民に聞こえてもいい。『人質を2人預かった。2人とも子供で、1人はキルリレ・ミーウという女だ。返して欲しければ、この島の女王を呼べ』と」
「!?」
ミーウはその内容を聞いて、ピクリと眉を動かした。
「な、キルリレ!?」
船員たちはざわざわと少しだけ騒いだ。
「恐らく、その放送を聞けば海軍はすぐに動くだろう。慈悲深いはずの“伝説の天竜人”とやらも、子供が2人も人質に取られているとわかったら出て来るはずだ。それを狙って……殺せ」
「了解です。兄貴」
船員たちは一斉に動き出した。
アルファも指示を取るべく、ミーウとキッドの元から離れた。
「……」
「……ミーウ」
キッドは背中合わせに縛られているミーウに向かって声をかけた。
「……どうする? おれらは助かるのか?」
「……たぶん、助かる」
ミーウははっきりと言い切った。
キッドはホッとしたように息を吐き出し、すぐさま明るくなった。
「それじゃァ、ここで待ってれば無事に帰れるんだな。よか……」
「よくない」
ミーウはキッドとは打って変わって、とても深刻そうな様子だった。きっとキッドは助かるだろう。自分は助からなくても、キッドが助かればそれでいい。問題はそこではない。ーー自分の母親が自分が捕まったせいで殺されてしまうかもしれないのだ。