第10章 あなたのためなら
「……黙れ!」
ミーウは低く押し殺した声を出した。
ー何か……何か策はないのだろうか……。
ミーウはアルファを睨んだ。
アルファはニッと笑うと、服の懐からヌンチャクを取り出した。そして、それを振って、ミーウとキッドに巻き付けて縛った。
「これで動くことはできないだろう」
アルファは2人を抱えて跳んだ。
「な!?」
キッドはアルファの行動に驚いて声を上げた。
「あァ、驚かせたな。おれは足長族でな。このように、脚力は普通の人間の何倍もあるんだ」
そう説明している間に、アルファの一味が船を止めている港に出た。
「お! アルファの兄貴!」
「兄貴! 見回り、お疲れ様です!」
アルファが港に着くと、船員たちがアルファに向かって挨拶をして来た。
「……兄貴、その子供はなんですか?」
1人の船員がミーウとキッドを見て、アルファに聞いた。
「あァ、こいつらは人質だ」
「人質……ですか?」
船員は怪訝そうな顔をした。ーーいつものアルファなら、人質など取らないで自力で殺したい者は殺し、奪いたい物は奪ってきた。それなのに……。
「……兄貴らしくないですね……。しかも、こんな子供を……」
「……まァ、そんな時もある。おれがいつも人質を取らないって言っているわけではないだろう?」
「そうですが……」
船員は納得のいかない様子だったが、船長の行動であるが故に口出しはしない。