第10章 あなたのためなら
「!?」
キッドは隣で驚いた顔をした。
「ミーウ、アルファの一味が泊まった島のことを知らないのか!? その島は……」
「その島は悲惨な事になったらしいわね。でも……」
ミーウはアルファを見つめた。
「アルファ自身は命令もしていないし、手も下していない」
「!?」
「表向きでは全てアルファのせいにされているけど、本当はアルファは何も関係なくて、一般人に手を出していたのはアルファの部下たち。アルファ自身は何もしていないの」
「そんな……」
キッドはアルファを見た。
アルファは木にもたれた体勢から、何も変わっていない。ただ、静かにミーウとキッドを見つめている。
「おかしな海賊よね。船員たちはとても暴力的なのに、その船員たちを率いている親玉は同じ海賊か敵の海軍にしか手を出さないだなんて」
「……」
アルファは黙ったままミーウとキッドを見ていたが、やがてふーと長く息を吐き、ニヤリと笑った。
「……どうやってそんな情報を手に入れたか知らないが……もし海軍から聞き出したのなら、海軍がよくそんなことを教えたな。相手のことを良いように言うだけなのに」
「聞き出したんじゃないわ」
ミーウは凛とした表情でアルファを見た。
「探ったのよ」
「探った?」
アルファは怪訝そうな顔をしてミーウを見たが、あることに気付いたのかククッと笑い始めた。
「なるほどな……通りで隣の坊主と少し雰囲気が違うわけだ」